第15章 終わりと始まり
「私、もうそっちに戻らない」
『…は』
言った。
言ってやった。
『何、言ってんだよ』
「もう戻らない。みんなと、もう会わない」
言って、しまった。
「私の力は思ってるより酷い。それに千春達の力が加わったら…」
『心配すんなって。俺が何とか…』
「それがダメなの」
100円を投入した。
今度は二枚同時に。
「傑と話して、傑に触れて、思った」
『何を…』
想いが爆発しそうだった。
口が震える。
「…とにかく、私は一人で生きていくことにしたの」
言えない。
どうしても言えなかった。
『ざけんな。自己完結させるなよ』
「私にはそうするしかない。死にたくないし、これ以上迷惑はかけられない」
『迷惑なんてかけられてなんぼだって言っただろ!お前のことで、迷惑だなんて思ったことねーって!』
うれしい。
頬が緩んだ。
『俺は今まで…お前と一緒に過ごすために、頑張ってきたんだよ…!』
今日、私は死ぬのかもしれない。
うれしくて堪らなかった
でも、私はもう決めたのだ。
心を鬼にしなくてはならない。
「私の部屋の前にスーツケースがあったと思うんだけど」
『おい…』
「番号は私の誕生日」
『無視すんなよ』
「中にみんなあての手紙が入ってる。普通の手紙と、呪いの手紙が一通ずつ」
傑の潔白を信じていた頃、任務帰りの新幹線で書いておいた。
こうなる可能性を、少し考えていたのだ。
ここまで、想定していた中での最悪の結末に沿った現実になるとは思わなかったけれど。
「みんなの呪いの手紙はお守りみたいなもん。ピンチの時に使って」
『一回黙れ』
「…五条宛の呪いの手紙は、例年通りだよ」
毎年贈り、毎年返されていた手紙と同じ内容。
開封すると私のことを忘れる仕掛けになっている。
察しのいい五条は一度も開けなかった。
『…いい加減にしろ』