第15章 終わりと始まり
口の中が乾いて、心臓が飛び出たいと言ってくる。
空気が口の中を行き来するだけで、声が出ない。
このままでは切られてしまうかもしれない。
お願い、何でもいいからしゃべらせて…。
「…誰、でしょー…か」
『だーれだ!』
『千夏。声でわかるって』
どこからか、幼い男女の声が聞こえたような気がした。
電話の向こうからは、喉が閉まる音が聞こえた。
『ちょっと待て。切るなよ』
見えるはずがないのに、深く頷いた。
騒音が徐々に遠くなり、服がこすれる音がする。
『お前…、今どこにいる』
「話しておくことがある」
あちらの話は基本的に無視することに決めていた。
だから、一方的に話を進める。
『答えろ』
「私が何をしたか。五条なら分かるよね」
『分かってるから聞いてんだろ。どこにいる?』
それ以上聞かないでほしい。
無視するのは大変なのだ。
「五条は私の力のこと、知ってたの?」
『……知ってた。子供のころからずっと』
「知らないふりしてくれてたの?」
『そんなことより、どこにいるんだよ…!!』
それならば、私のことを少し話した方がよさそうだ。
当初の予定にはなかったが、仕方ない。
「私には一人で戦う力があったみたい。ずっと千春が隠してたんだって」
『そう。後で聞く。居場所を教えろ』
「それで…」
『早く言え』
話を戻された。
もう、結論をぶつけないと話を進められない。
「五条、聞いて」
『昨日のことでこっちは荒れてるけど、心配ない』
「聞いて」
『戻ってきても俺らが守るし…』
「聞いて…」
『上のクソみたいな話は聞かなくて…』
「聞いてよ…!」
あと少しで泣いてしまいそうだった。
ここで五条が黙ってくれなかったら、本当に危なかった。