第2章 ハグの効果
「お疲れ様っす」
無言で車に乗り込んで、後部座席に横になる。
「いつも通り、寝ててもらっていいっすよ。部屋まで連れていくんで」
本当はまだまだ祓える。
まだまだいける。
「報告書。今書く」
「わかりましたー」
2級レベル、2体。
そして。
1級レベル、1体。
「やっぱりすごいっすね」
なにが凄いだ。
昨日もらった飴を舐めてなかったら、今すぐ自殺したいくらいだっつーの。
とっくに壊れてんだよ、こっちは。
こんなにつらい思いをしてまで呪術師をしている理由。
それは、とんでもなく幼稚な理由だった。
私は教師のような、子供を教え導く人になりたかった。
どんな子供も平等に扱い、優しい人間。
私の周りにはそんな大人がいなかったから、せめて自分がなろうと思った。
そんな時に五条に出会った。
自分の中に呪術師の才能に恵まれている自分がいた。
そして。
腐った呪術界から逃げられない人がいることを知った。
だから、私はそんな人の、五条の力になることを決めた。
呪術界を立て直したかった。
私が代償を顧みなければ、『消えろ』というだけで、腐った連中を消せる。
そう。
たった一人のために、私は呪術師として生活している。