第2章 ハグの効果
「キモイ面してんじゃねーよ」
「いいいいいいい、いいいななな」
小さいころ、自分の友達は呪いだけだった。
あっちは私を睨むだけだけど、目を見てくれるだけで人間より親近感を抱いていた。
「お前、話せるか?」
だから、本当は祓いたくない。
危害を加えることは分かってるけど、胸が痛む。
けれど、この痛みに気づかないふりをしなくてはならない。
「んななななな」
「…無理か」
私は普段から術式が使えるわけじゃない。
「自害しろ」
その言葉と共に、呪霊は自分で喉を物理的に潰し始めた。
普通、呪言師には言葉相応のダメージを負う。
けれど、私は身体的なダメージを負わない。
「ふぅ…」
染めている髪を、耳にかけた。
「私は特別なの」
これは呪いだ。
本当の自分を殺す呪い。
そして。
好きな人に好きと言えない呪い。
きっとこの気持ちを口にしたら、私は昔に置いてきた八乙女千夏に戻ってしまう。
我慢することを諦めてしまう。
もう、戦えなくなる。
呪霊を殺せなくなる。