第14章 ラストオーダー
「千夏、大丈夫?」
「心菜…。私、やらないといけないことがある」
そうだ。
思い出せ。
私はなんのために動いてきたのか。
「私は、五条に、普通の暮らしをあげたかった」
『うん、それで?』
「そのためなら、命をかけれた」
『うん』
心菜の手を離して、被害が大きかった場所へ向かう。
五条のために戦い続けたことに偽りはない。
けれど、それがゴールではなかった。
「私は、誰にも死んで欲しくなかった」
『…そうだね』
「私は、私は…、ひとりぼっちで死ぬ運命にある生き物を、救いたかった」
1人で死ぬなんて、悲しいじゃないか。
誰にも死んだことが伝わらないなんて、悲しいじゃないか。
最後の言葉を聞いてくれる人がいないなんて、悲しいじゃないか。
「私は、1人で死にたくなかった」
ポケットから紙を取り出した。
それに呪力を流し込み、型紙を作る。
「だから、私の周りにいる人は誰ひとりとして、死んじゃダメ」
利己的で愚かな考えだ。
できるだけ、できるだけ多くの人に囲まれて死にたい。
そんな欲望に塗れた不純な動機。
『それでいい。わがままで突飛なことばかりするのが、千夏だよ』
私はとんでもなく性格が悪い。
けれど、みんなはこんな私を認めてくれた。
ならば、私は私を認め、私らしくいるために努力しなければならない。
「千春。ここからどうしたらいいの?」
『紙をそこら辺に貼って、今から言う言葉を書いて』
千春に言われた通りにする。
色濃くなっていく不穏な空気。
想像する未来が酷いものだから、過度に嫌な空気を捏造し、感じ取っていると思い込んでいるのかもしれないが。
とりあえず、急いでこれを貼らないと、取り返しのつかないことになりそうだ。
『最後にもう一回力を込めて』
すると、綺麗に邪悪な雰囲気は払拭された。
呆気に取られてしまうほど、澄んだ空気になった。