第14章 ラストオーダー
「千夏…」
「心菜。今は何も聞かないで」
「…分かった」
燃えていた。
私の心は次のステップを考えて、燃えていた。
「ここで私に会ったこと、内緒にしてくれる?」
千春の言っていた通り、私はすぐにでもここを離れなくてはならない。
今回の事態で、私印象はとんでもなく下がっただろう。
どんな罰が待っているか、想像もできない。
だから、最悪の罰を考えてどこか遠くへ逃げる。
そうすれば、誰にも迷惑をかけずに、責任を全て私が背負うことが出来る。
破壊神、八乙女千夏といったように。
「いいよ。その代わりに、私の話を少し聞いてほしい」
「どのくらい?」
あまり長いと、困ってしまう。
心菜が提示した時間は1分。
許容範囲だった。
「愛華のこと、覚えてる?」
「うん」
「あの日の帰り、次に千夏に会ったら聞いてほしいことがあるって言われたの」
心菜は手帳の最後にあるメモ欄を見て、内容を確認していた。
忘れないようにメモを取っていたのだろう。
「まず、千夏の名字を聞いてほしいって言ってた」
「八乙女。八に、乙に、女」
確かに、心菜たちには名字を言っていなかった気がする。
ならば、この反応はどういうことだろう。
心菜は以前から私の名字を知っていて、さも私の返答が当たり前であったかのように振舞った。
「おっけー…。じゃあ、これ渡す」
渡されたのは紙切れ。
中にかかれていたのは、どこの場所か分からない住所。
都道府県名しか聞いたことがなかった。
「これ、愛華の住所ね」
「何でこんなもの…」
「さあ。千夏に会いたいんじゃない?私も詳しいこと知らない。でも、こう言ってたよ」
心菜の唇がゆっくりと動いた。
まるで、スローモーション映像を見ているような感覚だった。
「千夏は叔母さんの唯一の希望かもしれないって」
この言葉に反応したのは私ではなかった。
頭の中に千春の言葉が響く。
千春が心菜に質問があるらしく、私が代わりに質問した。
「愛華の名字は何?」
何でこんなことを聞くのだろうと思っていたが、心菜の返答に目を見開くことになる。
「今は林だけど、旧姓は八乙女。驚くことに、千夏と同じなんだよ」