第14章 ラストオーダー
『千夏。詳しいことは後で話すけど、あんたには力があるよ』
「…力がないから、こんなことになってんじゃん」
心菜が不思議な目で見てくる。
けれど、何も聞いてこなかった。
『あるの。自分でも気づいてるでしょーが』
「…私は、弱い」
『この有様で、皆パニック状態。次に起こることはなんだと思う?』
分かってる。
分かってるけど。
『起きてしまったことは変えられない。変えられるのは未来だけ』
「…もっと町を破壊しろって?」
『違う。千夏にしかできないことがあるでしょ』
「そんなの、ないよ」
『あるよ。呪いは呪いでしか祓えないんだから』
きっとここには呪霊が湧く。
そうなれば、誰かがここに来て呪いを祓うだろう。
『このまま見てるだけ?何もしないの?千夏が動けば救えるものがあるんだよ?』
「…誰かがやってくれるよ」
『人任せなんてダサいことしないの』
「私はずっと誰かに守られてきただけ。誰かを守るなんて、できっこない」
『ばーか。何言ってんだよ』
千春が目の前に現れて、私の頭を撫でてくれた。
『千夏は守られてるだけじゃないよ。千夏が守ってきたものは沢山あるでしょ』
「…そんなの知らない」
『目の前にいるじゃん』
千春が笑った。
『思い出して。千夏の原点は何?何のためにここまで頑張ってきたの?』
千春の投げかけで、目の前が開けたような気がした。
頭の中を駆け回る記憶。
どれもこれも楽しい思い出とは言えないけれど、つらい記憶も沢山通り過ぎたけれど。
どれも私の大切な記憶だった。
しーさんから始まり、五条と出会い、みんなと出会い…。
つまるところ、私は沢山の人に助けられ、沢山の人の時間をもらった。
それに対して、今の自分の態度はなんだ。
許されることではない。
足が動いた。
馬鹿みたいに重いけれど、バランスをとるのが難しいけれど、何とか歩き出せた。