第13章 息継ぎの泣き声
『あ、もしもし。今どこにいる?』
始まりは1本の電話だった。
「今?新幹線待ってるけど」
今日から数日間、地方での任務を任された。
どの駅弁を食べるかについて考え、胸躍らせていたところだった。
『先生から連絡あった?』
「ないけど。何?」
『夏油のこと』
「あー。帰ってきたんだ。そんなことで連絡くれるなんて。わざわざありがとう」
5日ほど前、とある神社に集まっていたマダムたちに、いくつか煎餅セットのようなものを貰ったため、みんなに配ろうとしていた。
しかし、皆との予定が合わず、直接渡せたのは硝子と先生だけで、その他の人には、部屋の前に袋を置いておいた。
五条からはその日のうちにお礼のメールが届いた。
傑は遠くに任務に行っているらしいから、そもそも傑自身がしばらく帰っていなかった。
特に『傑が帰ってきたら連絡を!』等とは頼んでいなかったが、硝子は律儀に一報してくれたみたい。
本気でそう思っていた。
『違う』
「何が?」
『だから…』
「あっ、待って。新幹線来ちゃった。また後で連絡する」
携帯を耳から話す時に、硝子の声が聞こえたが、なんと言っているかは分からなかった。
その事を特に気にすることも無く、スーツケース片手に新幹線へ乗り込んだ。
事の詳細を知ったのは、新幹線を降りた駅のホームだった。
「は…?」
硝子、先生、五条。
3人からほとんど同じ内容のメールが来ていた。
最も詳しく書いてあったのは先生で、最も淡白だったのは五条のメールだった。
硝子のメールには電話を催促する内容が書かれていたので、すぐさま電話をかけた。