第13章 息継ぎの泣き声
「千春はすごいなぁ…」
私は笑ってしまうほど千春に依存している。
あんなに流れていた涙が、一瞬にして止まってしまうのだから。
今だって泣こうと思えば泣けるけれど、さっきまでのような憎悪に任せた涙ではないはず。
「あんたがたどこさ…ひごさ、ひごどこさ……あはっ」
幼少期の遊びに救われるなんて、今まで思ってもいなかった。
千春が凄いのか、中毒性のある歌が凄いのか。
何気なく上を見ると、街灯に虫が集っていた。
いかにも夏だなと思った。
1回目の夏に、しーさんに拾われ。
3回目の夏は、最初の家族で過ごした最後の夏だった。
6回目の夏に、五条と出会い、7回目の夏に、五条と別れた。
そこから惰性で経験した夏が何回か過ぎて。
14回目の夏に、再会した五条と大暴れ。
15回目の夏に、初めて呪霊を殺した。
16回目の夏に、皆で海に行って。
17回目の夏に、五条と結ばれ。
18回目の夏。
友人を亡くす。
「まだ、夏が始まったばかりなのに…」
今回の出来事を上回るくらいの楽しい出来事を作りたい。
なんて、思うことは出来ない。
思えるはずがない。
夏は私の季節だ。
夏なら、私はなんでもできるはずだった。
夏を理由に、なんでもできるはずだった。
「誰だよ…」
誰だよ。
「命に終わりを作ったのは、どこのどいつだ…」
神が相手だとしても、私は犯人を捕まえて叱責したい。
私達の夏を返せ、と何度だって怒鳴ってやる。
だから。
誰か、誰でもいいから。
私の怒りの対象になってくれ。