第11章 裏切りのスパイス
あちら側の人間が千春のことをバラした。
ならば、私が千春の力を使うのも許されるはずだ。
「千春。私、ここから出たいな」
すると、目の前の檻に傷がついた。
「あれ。これって結構頑丈だったりする?」
『大丈夫』
優しい声が聞こえてきた次の瞬間。
綺麗に檻が砕けて、私を取り囲むものが無くなった。
「ったく。どこにお金かけてんのさ、冥冥さん。こんな頑丈な檻だとは聞いてない」
千春が初見で見誤ったことなんて初めて。
この檻はどうやって作ったのだろうか。
「それで、冥冥さん。千春のこと、誰から聞いたの?」
呪力を溜めて、冥冥さんの頭の横を狙って打つ。
「笑ってるけど、それなりに怒ってるよ」
そこそこ信頼していた人に裏切られ、上が約束を破ったことを知った。
どちらか片方だけでも不快なのに、同時に起きるなんて。
「ふふふ…あははは!」
「…何笑ってんの。怖すぎ」
冥冥さんが大笑い。
こんなこと、今までにあっただろうか。
思わず顔が引き攣る。
「その殺気、消してくれないかい?この状況で殺そうとは思わないよ」
正直言って信じられない。
けれど、千春が大丈夫だと言っている。
それならば、心から安心して警戒を解くことができる。
「やっぱり、千夏は千夏だね」
「はぁ?」
「それに、最初から殺す気なんてない」
冥冥さんなんて嫌いだ。
苦手から嫌いに変わった瞬間だった。
「この守銭奴め」
冥冥さんは笑いながら、椅子を片付けた。