第10章 誕生の隠匿
「あんたがたどこさ、ひごさ♪」
「ひごどこさ、くまもとさ♪」
いつも通り、昼間から公園で遊んでいた。
しーさんは3時には帰ってくると言っていたから、それまではここで遊ぶ予定だ。
「針がどこに来たら3時?」
「短い針が3、長い針が12」
「じゃあ、あの動いてるやつは?」
「あれは秒針。関係ない」
千冬と千秋は向こうでブランコに乗っている。
私達もブランコに乗ろうと言って、千春の手を引いた。
「すぐに興味が移るんだから…」
「ねーねー、なんでブランコってブランコって言うの?」
「それは、ブランって言葉…って、千夏!?」
どんなに頑張っても千夏の注意を10秒以上引けない、と千春はその時の私を評価していた。
自由奔放でマイペース。
何度怒りそうになったか分からない、と。
「千秋ー、かーしーて」
「いーよ」
きっとこの性格は皆が優しすぎたせい。
大抵の事は聞けば教えてくれたし、貸してといえば貸してくれる。
なんでも手に入る状態だったのだ。
「あっ、ホッピングしようかな」
「あー、私もそれやる!」
「千夏は今ブランコ乗ったばかりだろ!」
「やるのーー!」
お姉ちゃんがやることは、私もやりたい。
本当に3人が大好きだったのだ。
「分かった、分かった。私と千冬がとってくるから、待ってて」
「やったぁ!」
「なんで私も行かきゃダメなの」
「1人で行くのはつまんないもん。ほら、行くよ」
「ま、待ってよ」
ブランコに跨りながら、2人に手を振った。
「いーい?私たち以外にそんなこと言ったらダメだから」
「そんなことって?」
「…何でもない」
この時、私がホッピングをやりたがらなかったら。
千秋に『手毬遊びしよ』と、持っていた手毬を差し出したら。
なにか変わっていたのだろうか。