第10章 誕生の隠匿
そして、2度目の誕生日ケーキを食べた頃。
つまり、私が3歳になった頃。
私達はすくすくと育っていた。
しーさんは毎日毎日『可愛いね』と言ってくれて、どこに行くにもしーさんをつけまわした。
しーさんが仕事に行っている間、私達は外で遊ぶことを許可され、千春を先導に家の前の公園へ行き、外遊びを覚えた。
周りの人に変な目で見られることもあったけれど、千春が気にするなと言ったため、私達は気にせず遊んでいた。
千秋の誕生日の3日前。
「こんにちは」
しーさんが彼氏を連れてきた。
優しそうな人だった。
人見知り組の千春と千冬は部屋の後方へ、私と千秋は臆することなくその人に懐いた。
その人が家に来る頻度は徐々に増え、千冬の誕生日間近にはほとんど毎日家に来ては泊まっていた。
その頃には、千冬も心を開いていて、千春もまだまだ課題はあるものの、ある程度の微笑みは見せていた。
今思うと、この時しーさんが恋愛に走って私達を捨ててもおかしくなかったと思う。
けれど、しーさんは決して私たちを置き去りにしなかった。
それどころか、彼氏さんの支援によってできた暇な時間を、必ず私達のために使ってくれた。
彼氏さんと出かけても良かったのに。
私達との時間を大切にしてくれた。
多分、これがいけなかったのだと思う。
しーさんが私達を捨てる選択をしておけば。
あんな悲しいことは起きなかったと思う。