第10章 誕生の隠匿
千秋が2歳を迎えた頃。
つまり、私がこの家に来てから半年が経った頃。
しーさんは仕事を探し始めた。
さすがに貯金が底をつきそうだったのだろう。
朝から昼までコンビニで働いて、午後はファミレスで。
その間、私達は4人で留守番をしていた。
赤ん坊4人で留守番なんて考えられないけれど、私達には可能だった。
予め手の届く範囲にミルクやオムツなどを置いておいてくれれば、千春が使える。
勿論、部屋はびちょびちょのぐちゃぐちゃになるが、お金と身寄りがないしーさんにとっては、部屋の片付けで保育園代が浮く方が良かったのだろう。
そして、この留守番が機能したもう一つの理由は、千秋と千冬だった。
私達のトップはもちろん千春。
その下に千秋と千冬がいて、底辺に私がいる。
ここでは、底辺の私がキーになっていた。
3人のお姉ちゃん達は、私をとても可愛がってくれた。
いつでもどこでも、私を優先してくれた。
元々小柄で低体重だったこともあり、千春は私につききっきり。
千冬と千秋も何かあるとすぐに来てくれて。
私は3人に囲まれながら、危険のない生活を送っていた。
そのため、3人は私の面倒を見ると張り切った副産物として、私達の留守番は成功した。
「ただいま~。今日も疲れたよぉ」
しーさんは毎日疲れ果てて帰ってくる。
けれど、1度も嫌な顔をしないで、部屋の掃除をした。
私達がどんなに構って欲しいと泣いたって、怒ることは1度もなかった。