第70章 𝘚𝘦𝘤𝘳𝘦𝘵
「…千夏がいたら、学長達は救えた?」
「ひっ、っ……わかん、ない、でも、救う…ひっ、っ」
これから、千夏には戦ってもらわないといけない。
生と死を、僕らが有利になるように選んでもらわないといけない。
だから、現実をもう一度突きつけて動いてもらおうと思ったけど
「で、も、さ、さと、るがいるなら、もういっ、い…」
「へ?」
「こわ、かった。も、う、二度と、あんな思い、したくないっ、て思ってたのに〜……ひっぐ………また、いなくなっ、ちゃうんだも、…ぇっ」
厳しくても正しい言葉をかけて────
「……あーもー」
無理だった。
これ以上千夏を苦しめたくない。
だって、僕の名前を出して涙を流してるんだよ?
もー…
「千夏、ほんとに好き。大好き」
「えっ、ぁ〜…わ、たしも…」
「ずっとそのままでいて」
もう離したくない。
離れたくない。
失いたくない。
「泣かないで」
「む、ずかし……な」
「こんなにクマできちゃって。寝てないの?」
「さっき、1時間くらい、ね、たよ?」
「馬鹿?今寝なさい」
「せ、かく、悟と話せるのに、やだ」
────ズキュン
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁもぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!
「ほら、寝るよ」
やばすぎ、本当に。
背中をポンポンして抱き締めれば、千夏の嗚咽も段々小さくなっていって。
しゃっくりはあげていたものの、段々と落ち着いて…
寝たくないと言っていたのが嘘のように眠りについてしまった。
(…疲れてたもんね)
起こさないようにそのままソファに寝かせて。
5分という約束は7分になってしまったけれど、これくらい許して欲しい。
『もう寝たのか?』
「うん、ぐっすり」
千春が驚くのもそのはず。
渋谷がこんな風になってから、全く寝ていなかったんだとか。
寝ようとしても目が冴えてしまうとか言って。