第69章 取捨選択
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「うわぁ、布団カビだらけ…」
冷たいけれど、地面で寝るしかないか…。
「……寝られない」
『寝ようとするからだよ。目を瞑って、ゆっくり呼吸すれば…』
「もー、春ちゃんは固いな。なっちゃん、もっとくっつこ〜」
『は?』
ぐいっと寄せられて、そのまま千春の足に頭を乗せちゃった。
目はしょぼしょぼしてるし、体がふわふわする。
眠いはずなのに、目を瞑っても考え事をしてしまって…。
「……無理だ」
『珍しいね』
「私だって……大人だもん。考え事くらい」
『ばーか』
うっすら目を開けると、千春はニヤニヤしていて。
『私の中でお前達はまだ赤ちゃんだよ』
「…達って、誰」
『千秋に千冬。それに五条悟だってガキだ』
上になっている肩をぽん、ぽん、とゆっくり叩いてくれると、本当に気持ちよくて。
やっぱり千春といると安心する…。
「千秋と千冬って誰?」
『私たちの姉妹。今は家入硝子達が面倒を見てくれてる』
「春夏秋冬…。覚えやす」
『…そうだな』
正直、幼少期に千秋と千冬とすごした日々を全て覚えているかと言われたら、答えはNo。
でも、それでも、私にとってかけがえのない大切な姉妹だ。
……例え血が繋がってなくても、ね。
「…………ちゃんと、眠いんだけど……なぁ…」
どうして体は寝てくれないんだろうか。
それなりに体も限界なのに。
『…昔、五条悟に……”私のこと好き?”って聞いてただろ?』
「…そーだっけ、そうかもしれない……けど、それが?」
『いや。可愛いなって』
「…何?」
『本当にそれだけ。急に思い出したんだ』
「…怖」
『千夏はいつだって、何をしてても可愛いんだよ』
「……まじ、何なの」
『小学生になってもおもらしして…』
「恥ずいから…」
『千夏は本当に可愛い』
……ん?
「…ちーさんの、真似?」
『…分かった?』
「うん。だって、全く同じこと…」
千春から聞くちーさんは、いつもふわふわした人だった。
私の記憶のほとんどは、歳をとったちーさんだけど…
『…おやすみ』
て…………もー、なんでもいいや……