第9章 陳腐な七色、儚い紅
「あははは!マジで、マジで…ウケる!」
上裸の男が朝に大笑いしている光景は、何とも恐怖を覚える。
悟は冷蔵庫からいちごミルクを取り出して、飲み始めた。
「千夏があの先生に造られたぁ?ふはっ!あの人、どんだけ技術持ってんだよ」
目に涙を浮かべた悟は、私達の肩に手を置き、笑い続けている。
ゼーゼーと運動後のような息をしながら。
「普通に千夏の体は温かいし…。何なら昨日全部見たっつーの。おっぱいもまn…」
「下ネタはやめろ。朝からキツい」
「あはっ。まじ…お前ら、さいこー!」
笑い疲れたのか、悟は千夏が使っていないスペースに器用に大の字になって、倒れ込んだ。
「ここまで笑われると、ムカついてくるな」
「ね。やっぱり拷問に切り替える?部屋から医療器具持ってこようか」
でも、ここまで笑ってくれて良かった。
悟の大笑いは、この仮説が夢見物であることを示しているから。
そして、きっともうひとつも…
「でも、まぁ。2個目の方はある意味間違ってねーよ」
硝子と自分の間に電気が走った。
私達は2つ目の仮説こそ、ありえないと思っていたのに。
悟は、私達の予想を簡単に破ってくる。
「あは。やっべ。めっちゃ笑った…っ!」
「んん……」
私達を翻弄したバチなのか、千夏の足が悟な頬を蹴った。
悟は建前的に怒りながらも、優しい手付きで落ちそうになった千夏の足を元に戻した。
「千夏は、呪霊なのか…?」
「あ?違う違う。”ある意味”だよ、”ある意味”!」
「意味わかんねーっつーの!ちゃんと説明して」
「…んーー……ご、じょう?」