第69章 取捨選択
1つ。
悟はいない。
先生は死んだ。
もしかしたら、他のみんなも……死んでしまっているかもしれない。
2つ。
天使という奴がいれば津美紀さんを救える。
けど、これに私は関わらないと恵達と約束した。
3つ。
羂索を殺す。
個人的に傑の体を使われているのが気に食わないし、事の発端はアイツだ。
そのために、呪舞村に向かおうとしていた。
……そして、4つ。
私はもう……限界かもしれない。
どうして動けているのか分からないほどに。
疲れた。
だから、何もかも捨ててこのまま逃げるのもひとつの手だ。
この提案は私の体の……様子を加味してのことだろう。
確かに、今の私は戦えるような状況ではない。
「…呪舞村に向かってる時点で、みんなを助けることも、悟を助け出すことも諦めた。津美紀さんのことはみんなが頑張ってくれてるし、恵が許可した時点で私は津美紀さんのことを考えなくていい。…おばさんは天元様の元で動かないだろうし……多分、私が知ってる中で、今…羂索と戦えるのは私しかいない。だから、戦わないとダメなの」
『呪霊を、人間を殺すことになっても?』
「もう遅いよ…」
千春もどこか諦めたような、分かっていたような口ぶりだ。
「なっちゃんは、私から見ても酷いことされてきたのに、その人たちを含めたみんなを助けるために動くの?」
「…そういうのは関係ないよ。私、術師だもん」
術師なら自分の利益に関係なく呪いと戦う。
悟が術師にしてくれたから、死なないで済んだ。
彼が私を生かしてくれたから、彼のために、術師として生きていくことを決めた。
「ねぇ、春ちゃん。いいの?」
『千夏が言うなら、私は従うのみ』
「どうして?春ちゃんの意見はないの?」
綺羅羅は優しい。
入学当時から部外者の私に何かと構ってくれたし(喧嘩して勝ってからは話しかけてくれなくなったけど)、今も私が昔感じていた、納得できなかったことを言葉にしてくれている。
『…私は千夏に生かされた立場だ。私の言葉で千夏の人生を左右したくない』