第69章 取捨選択
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悟がいる場所から離れるのは嫌だったけど、今はそんな悠長なことを言っている場合では無い。
先生も死んじゃっ、……たし、時間が経てば経つほど大切な人が死んでしまうかもしれない。
そんなことを考えて歩いていたら、東京都から出ていた。
何駅もの距離を歩くのは大変だと思っていたけれど、案外楽だった。
埼玉県の大宮駅。
避難命令が出ているのか、人の数は少なく駅も利用できなかった。
遊歩道、というのだろうか。
宙に浮いた道が複雑に入り組んでいる。
その真ん中に立つ街灯?のようなもの。
先はよく見えないが、何かが座っているのが見える。
「やぁ。君が八乙女千夏?」
名前を呼ばれたから気がついたけれど、危うくスルーするところだった。
呪力があまり感じられない。
「まさかここに来るとは思わなかったけど…。勘がいいね」
ぶらりと歩いてきただけなのに、何故か褒めてくれる。
やったね。
「……?あれ、お前宿儺の指持ってるだろ」
「…はは。分かっちゃうんだ」
宿儺の指の気配は何度も感じている。
自分で取りに行ったこともあるし、悠仁のこともあるし。
それと似た気配をこいつから感じる。
”いーい?お話できる呪霊がいるけど、全員敵だから祓わないとダメだよ。千夏が躊躇していいのは───ちゃんだけ”
……悟の言いつけを守るなら、こいつを殺さないといけない。
見るからにやばそうなのは分かるけど、千春と綺羅羅を気にかけながら戦えるか分からない。
「ねぇ。指ちょうだい」
「……ぷっ。はは!それ本気で言ってんの!?」
爆笑をしだしたかと思えば、こっちに降りてきて。
私の後ろ……千春を見てまた笑った。
シュ────
「ひっ」
「おお、反応するんだ。流石」
綺羅羅を殺そうとしたみたいだけど、この2人は私の術式対象内だ。
そう簡単に殺させない。
「ちょ、こんなレベルの戦いなの?聞いてないんだけど」
『余計なことするな。自分の命を守ることだけに集中しとけ』
…。
「ごめんね。指は渡せない」
「ううん。渡すんだよ」
彼(?)のお腹に触ろうとしたが、数cmの誤差で避けられる。
その代わり、その隣の落下防止柵が細かく爆ぜた。