第69章 取捨選択
*****
この人は男たらしだと思う。
もちろん、五条さん以外に色目を使ってる自覚はないだろうけど、天然から派生した人懐っこさが、何も考えていない故の行動が、思春期の男の子を惑わせる。
「ねー、なっちゃん」
「…」
「無視ー?」
「…」
「ねーってば」
「何!」
自分が無視されたら怒るくせに、私のことは簡単に無視してしまう。
「どこ行くの?自由にしていいって言ってたけど…」
「呪霊、殺すの」
「できるの?」
「やるしかないでしょ」
この人、無駄な戦いはしないんじゃなかったっけ。
変な思想を前に語られた気がする。
「なっちゃんなっちゃん」
「だから…!」
「私も手伝うよ」
なっちゃんの術式は知っている。
要は、物理。
ちぃっちゃい原子をさらに拡大して…。
電子と原子核に分けるの。
「…無理だよ」
「何が?」
「綺羅羅は戦い方を知らないでしょ」
それで、呪霊を根元から解体する。
それが一番基礎の情報。
「困るなぁ。私だって高専にちょっといたよ?」
「そうだけど、貴女は狂ってないから」
狂う?
確かに私は凡人だと思う。
「……ごめん、何でもない。いいよ、一緒に戦お」
「?」
否定するのも面倒になった時の言い方。
少し不快だ。
「…ブツブツ」
「え、何?」
『無視していいから』
爪は噛むわ、首を掻きむしるわ…。
「ん〜…!」
意味わかんない奇声をだすわ…。
あ、この人限界なんだな。
そう思うのは当然だろう。
「そういえば…春ちゃん?は、なっちゃんのお姉さんなんでしょ?」
『…だから?』
「ずっと一緒にいるの?」
『まぁ。離れてた時も一時期あったけど、基本的には』
私だったら絶対嫌だけど…。
『千夏!あまり離れるな』
「あ、はい…」
…。
まぁ、なっちゃんのやばいエピソード何個か聞いてるし。
春ちゃんがいなかったらもっとイカれてたんだろうな。