第68章 (飛ばしてください)
───真夜中に指しかかろうとしているのに、部屋の電気はついたまま。
「…何?」
「ちょっとベッド貸して」
自分がした行いに対して白を切るつもりはないし、逃げるつもりもない。
でも、少しタイミングがわるかった。
「ここ、ホテルかなんかと勘違いしてない?」
「別に」
「…でたよそれ、『別に』って言えば済むと思ってんの?」
夜勤中である硝子はココ最近、昼には出勤していないため会うことが少なかった。
かといって、千夏から話はいつも聞いていたからか、久しぶりという気持ちはしなかった。
「千夏のところ、行ったんでしょ?」
「……あっけらか〜んとしちゃってさ。僕の方が拍子抜け」
本当に自分を殺したい。
どうして千夏に手を出したんだ。
「あのさ、我慢してるの分かってんでしょ」
「分かってるよ。明らかに拒絶されるより辛い」
「…一応謝っておくけど、私、完全にあんたが悪いと思ってるから慰めたりしないからね」
「いいよ」
「……あーでウザイ。これ以上ストレス増やすな」
そもそも、別れた時点で硝子には1発殴られてるし。
その時点からピリピリした視線を感じてる。
この人は100、千夏の味方。
「あのさー」
「何」
「近いうちに千夏と話してくんね?絶対追い込ま…」
「もう会う約束してるし。あんたに言われるとムカつく」
「…へーい」
ま、そうだよな。
100%僕が悪いのに、子供ができて困るのはあっち。
だからこそ、本当に後悔している。
千夏には散々我慢させてきたせいで、”我慢が当たり前になって””我慢していることに気づかない”ようになっている。
僕のせいで、千夏は素直に自分の欲望に気づけない。
気づいたとしても絶対に言わない。
だから、千夏の口から出る「子供はいらないかな」という言葉が本心なのか、我慢の末に出た言葉なのか、僕に判断できない。