第68章 (飛ばしてください)
博物館なんて正直興味無いけど、アリの観察するくらいだから興味あることひとつくらい見つけられるだろう、という浅い計らいで予定を立てたのだが…。
「ああ。あれはアリが入ったり出たりしてるのが面白かったんですってー」
「それで灰原も見てたの?」
「はい!確かにあれはハマりますよ」
灰原が優しいのか、バカなのかは……よく分からないけど、少なくともこの笑顔に嘘があるとは思いたくない。
「もっと時間の使い方考えた方がいいんじゃない?」
「気づいたら時間経ってるんだよ。今度七海もどう?」
千夏が帰ってきたら、改めて何が楽しかったのか聞いてみよう。
よく分からない答えが返ってくるに違いない。
その翌々日の朝、例の千夏が帰ってきたとの話を人伝に聞いた。
けれど、その姿を見ることは出来なかった。
「朝タバコ吸ってたんだけど、灰原と出てくの見えたよ」
どうやら、灰原と朝一でどこかに行ったらしい。
任務の報告は済んでいるから問題は無いらしいが、誰も連絡が取れない状況。
まぁ、灰原がいるなら大丈夫だろう、という安心を皆抱いていたが、心配なものは心配。
だって、連絡が取れない時は大体千夏の余裕が無いときだから。
「これ勝手に貰っていいかな」
「やめとけ」
部屋前に乱雑に置かれたスーツケースとお土産と思われる紙袋。
せめて部屋の中に入れとけ、不用心。
2人が帰ってきたのは翌日の昼頃。
千夏が無断外泊をするのは初めてだったけど、灰原が規則を破るのは珍しかった。
「あー…怒られますかね、やっぱり」
少し疲れたような顔をしているのは、その背中で千夏が寝ているからだろうか。
「えっと……内緒です。すみません」
どこに行っていたのか秘密だし。
「…それも、ごめんなさい」
どうして2人で出かけたのかも秘密。
「ソレ、貰うよ」
「あ、すみません!じゃあ、お願いします…」
千夏を傑に渡したら、すぐにどこかへ行ってしまう。
帰ってきたのは少し変な灰原だった。