第68章 (飛ばしてください)
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「…」
「…」
小学生の時は外で遊ぶのが基本だったのに、中学生になるとゲームやら買い物やらに時間を使うようになったひとがほとんどだと思うが、千夏は小学生らしさを残したまま成長している。
「…あれ、なにしてんの?」
放課後、ずっと姿が見えないと思っていたら運動場の端の日陰にぽつんと座っていた。
その隣では灰原も同じように座っている。
「アリの巣見てるんだとさ」
「は?何で」
「かれこれずっと見てるくらいには面白いらしい」
そもそも、千夏は基本的に任務に行っているため、俺たちとは一日のスケジュールが大きく異なる。
こちとら授業を終えて、体育館でバスケを終えてきたところ。
その反対に、任務を終えて余った時間をアリの巣を見ることに使ってたのか…。
楽しいか、それ。
「ちょい傑。見てこいよ」
「…仕方ないね」
馬鹿にするように情けをかけられてあやうく手が出そうになったけど、俺は優しいのでそんなことはしない。
良かったな、傑。
「今度、アリの巣観察キットでもあげるか」
「根気ないからできなそう」
「あれって置いておくだけじゃねーの?」
「流石に砂糖とかいれるんじゃない?」
「なるほど。最初の1週間だけ真面目に世話するタイプだし、無理だな」
「でしょ。博物館とか、そういうところに連れて行った方がいい気がする」
「あいつ、行ったことあんの?」
「さぁ。校外学習……ああ、行ってないのか」
「今度皆で行く?」
「いーよ。上野?」
「おーけー」
適当に予定を立ててたら傑が戻ってきて。
その体の前後には千夏と灰原がくっついていた。
「え、どゆ状況?」
「働きアリを馬鹿にしたら、気持ちを知れって言われた」
「あーそりゃ、因果応報だわ。似合ってるよ」
「いんがおーほーってなに?」
「自分でやった悪い行いは自分に返ってくる、みたいなことです!」
呑気なことを言っていないで、今すぐ傑から離れてもらいたいのだけど。
そんなことを言う権利は俺にない。