第68章 (飛ばしてください)
日付が変わる前には帰ってくるとのことだったので、適当に時間を潰していたのだが
(……遅い)
ゴロゴロしていても時計の針は思うように進まない。
電話しようかと思ったけれど、ひと月ほど前のことを思い出してやめた。
”あのさぁ。誰とどこで食べてるとか、そういうの共有してるんだからご飯中に電話かけてくるのやめてくれない?それで会話とか食事が止まるの嫌なの”
”じゃあ僕も混ぜてよ〜”
”嫌。ちなみに、硝子もあの鬼電にはブチ切れてたからね”
(…暇〜)
結局、千夏が帰ってきたのは23時くらい。
半分寝落ちしかけてたから、あんまり覚えてない。
ピーンポーン
千夏がインターホンを鳴らすなんて珍しい、と思いつつカメラを覗く。
そこにはなんとなーく予想していた現実が。
無駄に高解像度の画面に、学長のイカつい顔がはっきり映っている。
「せぇ〜かい!」
「静かにしろ。迷惑だろ」
「ふふ…」
ドア越しに聞こえる声に小さく息を吐く。
「こんな時間にすまんな」
「別に〜?家まで連れてきてくれてありがとうって感じですよ」
学長に担がれているのは酔いつぶれた千夏。
お酒に弱いわけではないけれど、特別強いわけでもない。
羽目を外しすぎだ。
「あ!悟!」
閑静な廊下に千夏の声が響き渡る。
「あ〜悟〜!」
「しー…!」
「あのね〜、お酒、とご飯!」
これだから酔っぱらいは…。
「千夏、静かに」
「…?」
真っ赤な顔で首を傾げるなんて反則だ。
「…10秒だけ我慢します。その後大きく惚気けます」
「それは勘弁してくれ…」
千夏の体をこっちに引き寄せ、学長に頭を下げる。
どうせまた明日会うし、細かい礼は明日ということで。
「靴脱いで?」
「そんでねぇ〜ふふっ」
「千夏、脱いで」
「脱ぐ?あ〜えっちだ!ダメだよ〜」
…もう全部脱がせてやろうか。
そうだ、そうしよう。
「…?あ〜ありがとう〜」
「…」
親切心で脱がせているわけじゃないけど。
まぁ、いいや。