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【呪術廻戦】infinity

第9章 陳腐な七色、儚い紅




私だって子供じゃない。

大人の付き合いというものを知っている。

キスを仕掛けた時点から、頭の片隅で考えてた。



「…いーよ」

「は?」

「だから、いーよって」



五条は何度も目をパチパチとした。



「伝わってない?」

「いや、伝わっては、いるけど…。お前、ほんとうに千夏?」

「そうだよ」

「あの、千夏?」

「どの千夏だよ」



五条の顔がおかしくて笑ってしまう。

こんなにもすっとぼけている五条なんて、二度と見られないだろう。



「ほら、はやく…ぅっ!?」



頭の中は大パニック。

初めての他人の舌の感触に驚き、キスで全身が反応することに驚き。

息を吐くときに声が出てしまうことに驚いた。



「ご、じょ…くるし」



そう訴えてやっと初めて口を離してくれた。

やっぱり、さっきまでの五条はどこにも居なくて。

私を女として見てくる狼しか、ここにはいなかった。



「…移動すんぞ」

「どこ、に?」

「俺の部屋」



ひょいと抱えられ、はるか昔にやった『布団干し』という鉄棒の技を思い出した。

ここはお姫様抱っこだろ、と思ったが、今の五条には何を言ってもダメだろう。

しかし、布団干し状態は一瞬のことで。

私の心の声が聞こえたのか、スルッと体が移動して、五条の両腕に体重がかかる。



「それともここでする?」

「なっ!」

「そういうプレイが好きなら…」

「それ、セクハラ!馬鹿なこと言ってないで…」

「言ってないで…?」

「…早く部屋行こ」



恥ずかしくて、どうにかなってしまいそう。



「はは。りょーかい」

「笑うなっ!」



人1人抱えているはずなのに、軽々しく走る五条。

もう少しダイエットした方が良かっただろうか。



「……ありがと、五条」

「ん?」

「今年の夏もすっごく楽しい」



失速して、五条が笑う。



「来年も、再来年も、この先ずっと、夏はお前のもんだよ」

「…うん」

「千夏の季節だ」

「うん」

「まだ1000回中の18回」

「うん」



五条が優しいキスをくれた。



「残りの夏も、一緒に馬鹿なことして笑おうぜ」

「…うん」



五条の首に手を回して、今度は私からキスをした。

キス後の笑顔に穴だらけの心を射抜かれたことは、言うまでもない。
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