第9章 陳腐な七色、儚い紅
そっと五条の頬に手を添え、唇を重ねた。
技術も知識もないから、ただ重ねるだけ。
「な…に」
私の目には、驚く五条の顔が写ってる。
きっと五条の目には、満足気な私の顔が写ってる。
「…は。どういうドッキリ?」
「ドッキリじゃないよ」
「ま、待て待て」
もう一度キスしようとしたら、顔を退けられた。
「どゆこと?」
「キスしたの」
「そうじゃなくて…。今まで頑なに一線は越えてこなかったじゃ…」
それはそう。
でも、今は違う。
だから、返事の代わりにもう一度口付けた。
「五条の唇、柔らかい」
「…」
まだほんのりと、キスの余韻が残っている。
そっと唇に触れると、じーんと温まっていて。
自分の唇だとは思えなかった。
「はぁ。なんか、めっちゃドキドキして疲れる」
「…はは。なんか、もう、よく分かんねーや」
ぐっと引き寄せられ、五条の胸に頭をぶつけた。
「これ、俺からしたら怒られるとかいうオチ、ないよな」
「どーだろ。試してみれば?」
「…ほんと、可愛くねーやつ」
そこからは誰もが想像出来る流れ。
何度も、何度もキスが落ちてきて。
思わず、退いてしまうほど。
でも、すぐに腰を引かれて、五条からは絶対に離れられなかった。
「なんか……慣れてる」
悔しくて私も頑張ってみたけれど、すぐに主導権を握られる。
途中から、もうこれでいいやと思い、受け身の姿勢に変えた。
そうしたら、そうしたで、酔いが回ったように、何も考えられなくなった。
「ちょ……すとっ、ぷ」
バンバンと五条の胸を叩くと、体と体の間が少し空いた。
「何?」
「ちょっと、きゅーけーしたい」
「……無理って言いたいけど」
五条は頬に張りついた髪を払ってくれた。
「俺も少しクールダウンしないとヤバい」
そして、小さくこう言った。
このままだと止まれなくなる、と。