第9章 陳腐な七色、儚い紅
今が絶好のチャンス。
きっと、普通の女の子と男の子だったら、ここで告白して関係が発展するのだろう。
「ねー、目ぇーつぶって?」
肩をトントンと叩いて、しゃがめと命令する。
「何する気?」
「面白いこと。準備するから、目閉じて」
けれど、私達の関係が発展することは絶対にない。
言う通り目をつぶってくれた五条は、きっと…多分、私に好意を抱いてくれている。
こんな絶好のチャンスを逃す私は馬鹿なのだろうか。
私は五条に想いを伝える気はない。
それは、私達が離れ離れになる合図だから。
想いを伝えたら、お互いがお互いのために命を懸けてしまう。
けれど、お互いの立場は天と地ほど離れていて、『五条に守られる私』という構造が、当たり前にできてしまう。
その構造を、恋愛によってできた構造にしたくない。
私は五条家の五条悟に恋しているのではない。
五条家の五条悟を含めた、五条悟という人間に恋をしているのだ。
でも、いくら私達が訴えても、周りの人はきっと『五条家の坊ちゃんに好かれて、ラッキーな女』と言う目で見てくるはずだ。
そう思われたくない。
私ができることは、『五条と同じくらい価値のある”特別な”人間になり』『五条の”特別”を無くす』こと。
本当は御三家なんて無くしてしまいたいけれど、呪術師は才能が力を決める。
血筋でまとめられてしまうのは仕方ないだろう。
だから、私は五条に想いを伝えない。
私がそう思っていることを、五条も分かっているから、何も言ってこない。
私達の関係はずっと平行状態を保っている。
けれど、それも今日で終わり。
1歩前へ、進もう。
私はもう、我慢できない。
この坊ちゃんが、愛おしくて堪らないのだ。