第67章 隠し事
「手はあるんだろ?」
もう1回くらい地面に叩きつけてやろうとしたけれど、天元が先に拾ってしまう。
どうせ話を聞いても分からないのだから、と千春に愚痴を言おうとしたけれど、天元から出てきた名前……。
それは決して無視できない、私の大切な言葉だった。
「…天使を名乗る千年前の術師がいる。彼女の術式はあらゆる術式を消滅させる」
「え……天使、って」
「あれ、これって…」
「何?知ってんの?」
「いや、知ってるっつーか…」
一斉に視線が集まる。
”私はずぅっと、千夏ちゃんの味方だよ?”
───ちゃん。
て──ちゃん。
てんしちゃん。
「違う。───ちゃんは呪霊!!死んだの!悟が祓った!!」
そもそも、tenshiちゃんは私が名付けた名で、天しちゃんの本当の名前なんて知らない。
何で10シちゃんって名付けたか……その理由はごくごく普通で────
あれ?
「どういうこと?」
「以前とある呪霊とバトったんですけど、千夏さんがその呪霊を”天使ちゃん”って呼んでたんです」
私が名付けたんじゃない。
──ちゃんの名前は
『とにかく、その天使が術式を消滅させるんだろ?どこにいる?』
「東京の東側の結界(コロニー)だ」
千春がつけたんだ。
話が着々と進んでいく中、千春が私の耳にだけ届くように囁いた。
『…解散したら、東側の結界(コロニー)に行くからね』
「天使さんを探すの?」
『…そう』
私が好きな絵本やテレビに限らず、天使という言葉や存在は特別なものでありながら珍しいわけではなかった。
だから、──ちゃんと出会った時に咄嗟にその名前を与えることもあるかもしれないが…。
千春の異様なまでの落ち着きとこの郷愁の表情を見る限り、偶然と思う方が難しい。
けれど、私は何としても悟を助け出したいから、この提案に乗ってしまった。