第9章 陳腐な七色、儚い紅
「俺なんかより、千夏や傑みたいな頑固な夢見バカの命の方が価値があるん…」
「ううん。命の価値に差なんてない」
「先に価値をつけたのはどっちだよ」
「つけてない。さっきのは、事実を言っただけ」
本来誰の命でさえ価値は同じであるはずなのに。
今の世界では資本や後ろ盾によって、命の選別がされている。
建前上は『みんな平等!』とか言っているくせに。
何が平等だ、クソ。
だから、私は私の力を使ってこの世界を変えたい。
せめて、呪術界だけでも。
五条を特別という地位から、引きずり下ろすために。
「私、頑張るね」
「…いいんだな」
「うん。あの時みたいにまた暴れたら、今度こそ許してくれないでしょ」
「結構楽しかったんだけどなー」
「…私も」
あの時は、自分がヒロインになった気分だった。
五条と2人で力を合わせて、勝てっこない相手に向かって宣戦布告。
持ちうる全ての力を使って、全面衝突。
こんな映画みたいなことが、実際に4年前に起きた。
「てか、五条って泣くんだね」
「…ん、まぁ。すっげー久しぶりだけど」
「どのくらい久しぶり?」
「そんなのどーでもいいだろ」
泣いてしまったことが恥ずかしいのか、すぐに話を切ってくる。
可愛くて、愛おしくて堪らない。
私のあるパラメーターは、かつてないほどの値を取り、暴走を始めた。
「そろそろ帰る…」
「待って」
ぴょんっと飛び降りて、五条に駆け寄る。
「ふふ…」
「暑いんだけど」
「我慢して」
少しだけ汗の匂いがするけれど、全く気にならない。
文句を言いながらも受け入れてくれる五条の胸に飛び込んだ。