第67章 隠し事
おばさんが本殿だと言った場所は、見渡す限り白色の領域だった。
誰もが望む天国のような…、先の見えない地獄のような…そんな場所。
「初めまして、禪院の子、道真の血、呪胎九相図、五条の子、そして…宿儺の器」
気味の悪い人間に見慣れている私でさえ、その者の存在は異質だった。
無の境地に立つ神様…とでも形容すべきか。
「私達には挨拶なしかい?天元」
この人が天元…。
話には当たり前に出てくるけれど、誰も姿を知らない。
「君は初対面じゃないだろ、九十九由基。それに…輪廻の血も。会うのは初めてじゃないな」
『…いつの話をしてるんだ』
輪廻の血。
初めて聞く千春の一部に気を取られて、自分のことは全く響かなかった。
おばさんの重みが肩から消えると、今度は千春が身を寄せてきた。
千春は自分のことを話さない。
それが一族の決まりなんだとか。
歴史も、存在も、はるか昔に消滅し、残されるは自分達の記憶のみ。
生まれながらにそれを抱え、千春は辛くなかったのだろうか。
天元とおばさんが色々話していたが、初めから理解するのは諦めている。
「僕達はその羂索の目的と獄門疆の解き方を聞きに来ました」
でも、悟に関わることは何としても理解しなくてはならない。
「勿論…と言いたいところだが、1つ条件を出させてもらう。乙骨憂太、九十九由基、呪胎九相図、八乙女千夏」
千春が小さく舌打ちをする。
「4人のうち2人はここに残って私の護衛をしてもらう」
『千夏は絶対に渡さない』
「…そうか。ならば3人から選んでもらおう」
千春が僅かに震えている。
「…怖い?」
『平気』
ぎゅっと手を握ってみると、少しだけ顔が柔らかくなった。
私でも千春の役に立てる、と勝手に自分を肯定した。