第67章 隠し事
『千夏、起きなさい』
千春の声は寝ていてもよく届く。
理由は知らない。
目を覚ますと、そこは見た事がない部屋で。
『おはよう』
「…ん」
お水が飲みたい、なんて呑気なことを言いそうになったけれど、先程1度目を覚ましたからか、状況を飲み込む速さはあった。
「やーやー、やっと起きたのか」
「…」
なんか…嫌いな人の顔が見える。
会いたくない人の顔が、見える。
「久しぶりだね」
「……千春〜、ちょっとお腹空いた〜」
「ガン無視?おーい」
千春はポケットからチョコレートを1粒取りだして、口に突っ込んできた。
甘くて甘くて。
逆に苦かった。
なんだから体が重くて、本調子ではない。
「ありゃ、真希!髪の毛…あと顔も……どうしたの?」
けれど、真希の痛々しい姿に体が飛び起きて、つんつんと掌をつついた。
「治療は受けましたし、大丈夫です」
「何があったの?痛そう…あ、他に怪我は?」
「大丈夫ですから」
「そう……ごめんなさい」
こうやって周りが見えないのは、私が子供だから。
冥冥さんにも「大人になりなさい」と言われていて、もちろん分かっているけれど、どうやったら大人になれるのかは分からない。
「…へぇ、面白いね」
『何か知らないか?』
「さぁ。何か分かったら連絡するよ。千夏の携帯でいいんだろ?」
『ああ。頼む』
「着拒にはされてないよね?」
『大丈夫』
ぼぉっと流れる会話を眺めていたら、どうやらここから天元様に会いにいくらしい。
行きたくないなぁ、なんて言う感情が表に出ていたようで。
「大丈夫だよ。天元は上層部と直接的な繋がりは無い」
「…ほんと?」
『本当に』
「…あのねぇ、少しは私のこと信じてくれない?」
「おばさんのことは信じてるよ?でも嫌いなの」
「私、なんかしたっけ?」
「私の事……子供扱いするんだもん」
初めて会ったのが学生のときだから、その時の名残かなにかは知らないが、いつまで経っても顔をむぎゅーってやってくるし、頭も撫でてくる。
先生と違って、おばさんは舐めたように撫でてくるから嫌いだ。