第66章 親愛なる生徒へ
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人の死には慣れたらダメだと思っていた。
それは、慣れた頃に感じる葛藤で、そう考える時点でダメなのだと、小さな自分が常に反論している。
でも、慣れてなかった。
抗っても抗っても、取り返しのつかない現実は、やっぱり私には重すぎた。
「……いま」
『……空耳だ』
「ちがっ……いま、頑張れって…」
『空耳。忘れなさい』
分かってる。
もう……夜蛾は死んじゃったんでしょ?
『…深呼吸しろ』
もう、私の頭を撫でてくれないし、お話してくれないし。
怒ってくれないし、ご飯も奢ってくれないし。
『おい、千夏?こっち見て』
朧げな千春の顔が真正面に。
ぼやけてはっきりしない。
「……はぁ、はぁ……千夏か?」
…誰?
白黒の物体は私の前を横切って、夜蛾の前に腰を下ろした。
「……パンダだってな、泣く時は泣くんだよ」
遠吠えにも近いような鳴き声は、初めて聞くもので。
あんなことや、こんなこと。
全てが蘇ってくる。
最初は本当に嫌いで会いたくなかったし、待ち合わせをしても仮の住まいから出なくて困らせた。
借金の取り立てと間違えられて、隣の家の人に事情を説明している時は笑ったけど。
高専のときは本当に、数え切れないほど迷惑をかけて、何回も何回も怒られて、泣きそうになった時もあったけど、最後は絶対に頭を撫でて許してくれた。
『千夏』
「…ハァ…ハァ……」
『…』
「……私、何も返せてない」
『泣くな』
「わたしっ……」
『……5分で、泣き止んで?お願い』
千春に優しく抱き締められながら、パンダの声に隠れながら泣いた。
たくさん、思い出すことはあったけれど、どれも一瞬で次の映像に切り替わって。
それほどまでに多い思い出と愛が私を追い詰めた。