第66章 親愛なる生徒へ
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この男が殺されなければならないほど、この戦いは情をなくしたか。
まさか、このような結末を迎えるとは思っていなかったために、千夏の涙に気づくのが遅れた。
(…このまま崩れるか、否か)
ここまで来たら、いっその事崩れてしまった方が楽なのかもしれない。
感情を押し殺すより、楽なのかもしれない。
けれど、千夏は我を失ったとき、呪力が暴走して制御できなくなる。
その結果、後悔することになるからいつも食い止めているのだけれど。
『……大丈夫』
泣いているうちはまだいい。
涙が枯れて、無表情になったときが悪夢の始まりだ。
「…オレは正道を安全なところに連れていく」
『ああ』
「…」
2人残された私達は静かに身を寄せあった。
とっくに5分は経っているが、落ち着きが見えてきたので、もう少しだけ待つことにした。
「…はる」
『ん?』
「…行く」
『そうか』
呪力に問題は見られない。
……耐えたか。
「……何で、死なないといけなかったの?」
『詳細な通達はしらないが、彼も手配中だったんだろう。偽夏油のせいだろうな』
「…そっか」
『……どうする?』
「手配中って、私と悟もされてて。でも、硝子は治癒できるから殺されないと思うし…。悟も私も死なないし……これで合ってる?」
『ああ、きっと』
「それなら私は悟のところに行く」
……一応聞いておくか。
『五条を救うのと、これ以上誰も死なないこと。どっちを優先する?』
迷うな。
「……両方」
『…分かった』
迷って欲しくなかった。
理想を叶えるべく奮闘し続けて欲しかった。
そんな思いを決して表に出すことはせず、
『行こう』
「うん」
千夏の手を取って走り出す。