第66章 親愛なる生徒へ
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バッ────
破裂したような、なにかが擦れるような、音。
その1秒後にその風が頬に当たった。
「はぁ…はぁ……何してんの?」
「…」
「ねぇ」
「…」
「何してんの?教えてよ」
もう動かなくなった体に残る、最後の足掻き……というか。
この声がまだ聞こえるのは、奇跡だと思った。
『大丈夫か』
布が擦れる音。
体の感覚は既に消えているが、音から肩でも叩かれたのだろうと思った。
「なんか言えよ!っ」
『千夏。先にこっちだ』
……千夏、か。
「ハッ…」
『殺すのはあとでも出来る。な?』
この声は……誰のものだろうか。
少なくとも、千夏が言うことを聞くような間柄…。
硝子……ではないよな。
「せ、せんせ?起きて?」
ぺちぺちとした音が頭に響く。
決して心地よくはなかったけれど、何故か音が温かかった。
「,せ…、や、夜蛾…、せん、…ねぇ」
『もう無理だ』
「むり、って何?治してよ」
『…』
「千春ならできるでしょ!さ、さっき、あの人に、やった、みたいに!」
千春…?
なんで、千春がここに、実体を持っているんだ?
『無理』
「だから!」
『無理だってお前も分かってるだろ!』
千春の喝は思っていたより圧があった。
『…何回も言わせるな』
「言うよ!だって、生き返るかもしれないじゃん!」
『あの2人の例は忘れろ』
「忘れない。だって、生き返ったもん」
『…あのなぁ』
しん……と音が止んだ。
「…学長は、先生は……夜蛾は…死んだらダメなの」
全ての呼び名に思い出が蘇る。
それは出会った時から、今までの…最早夢だったのではないかと思うくらいに一瞬だった時間。
”この人、高専の教師だから”
”…”
”せんせー。コイツ、マジで人見知りだし、呪力やらなんも知らないから、教えてあげて”
「…この人は……死んじゃ嫌なの…」