第66章 親愛なる生徒へ
「ったく。なんでこんな混んでるんだよ…」
寒いと言ってマフラーで顔を隠しているため、ひと目では千夏ということは分からないけれど、腰につけているマスコットやら飴缶は彼女のアイデンティティになっている。
「えー、本当にこれに並ぶの?」
「初詣に来たんだろ」
「…五条もこういうの大事だって言ってたし。初詣はするけど、メインは屋台だから」
「はいはい」
家ではあまり家族で出かけなかったらしく、初詣に行った記憶は1、2回らしい。
「そういや、悟と喧嘩でもしたのか?」
「…何で?」
「最近あまり一緒にいるところ見ないから。4人でいるのは見るけどな」
「…喧嘩はしてないけど」
…年頃の子だから色々あるのだろう、なんて考えたけれど、悟の立場から見たら千夏との付き合い方を考えるのは自然だろう。
いつもヘラヘラしているけれど、多方面に気をつかっているのは知っている。
(あ…)
ふと、千夏に書いてもらいたい書類があったのを思い出した。
こういう手続系のものは、様々なリスクを減らすために俺を経由して悟に渡しているが、そろそろ千夏にもできる範囲のものはやってもらわなくては。
「さぶっ…」
まぁ…今言うことでもないし、正月が終わったら渡すか…。
「あ、せんせー」
「ん…」
パシャ
「ふ、変な顔。これ、硝子に送ってもいい?」
千夏の携帯画面にはポーズを決めた千夏と半目の俺。
「別に構わないが…」
「送っちゃおー。あいつ、絶対暇してるから返信早いよ」
世間一般的に見たら教師と生徒が夜中に限らず2人で出かけるのは如何なものか。
呪術高専が特別だとしても、周りから見たら怪しまれるに違いない。
「ほら…くっぐ、羨ましがってやがる」
…ま、千夏が楽しそうならいいか。
決して簡単ではない道を歩む中で、小さな楽しみを見つけてくれれば、それで。