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【呪術廻戦】infinity

第66章 親愛なる生徒へ




まずい。
かなりまずい。


パンダを抱えて全力疾走。
寮は生徒自治であるため本来立ち入ることはないが、共同スペースに向かって一直線。


「すまない!」


謝罪と同時に入った部屋の明かりは付いておらず、窓から漏れる月光が唯一だった。


「…」


千夏が用意したであろうダイニングテーブルには蕎麦と器が3皿と、そのつけ汁。
当の本人は椅子の上で膝を抱えていた。


「…遅い」
「本当に申し訳ない。中々終わらなくて…」


時刻は23時頃。
夕飯と言うにはあまりにも遅すぎた。


「いいよ、来てくれたから」


けれど、彼女は一切不機嫌を出さずに器に汁を分け始めた。


「いちおー、ネギとわさびも用意したよ!私、いらないけど」
「…ありがとう」


昨日のあのテンションから、楽しそうに準備してくれたことが簡単に想像つく。
夕飯の時刻目指して、本来ソファのみの部屋をセッティングし、そばを茹で、連絡を待つ。
電気もつけず、ただひたすらに待つ。
その過程を想像すると、何だか泣きそうになった。


「食べよ食べよ!せんせー、具何がいい?」
「余ったのでいいから。好きなだけ乗せていいぞ」
「まじ?やったー」


今ではこうやって笑顔を見せてくれるのが当たり前だけれど、昔はそもそも目すら合わせてくれなかった。


「「いただきます」」


パンダは隣の椅子で小さな絵本を読んでいる。
千夏が興味深そうに見ているが、特に何も言わずに食事に戻っていた。


「せんせー、仕事終わったの?」
「ほとんどな」
「へぇー」


どうやら、俺の仕事への興味は絵本以下らしい。


「後ちょっとで年越しだねー」
「そうだな。初詣は行くのか?」
「んー、迷い中。去年は行ったけど…」


千夏がニヤける。
……悟だな。


「一緒に行くか?」
「……マジ?」
「待たせたお詫びに屋台奢ってやる」
「マジ!?!?行きたい!!!!」


時間も考えず喜ぶ姿は、やっぱり子供で。
一生このままだったらどうしよう、と何故か案じてしまった。


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