第66章 親愛なる生徒へ
*****
「…まぁまぁ。暇つぶしにはなりました」
寝落ちしていたパンダも目を覚まし、2人が遊んだ形跡を片付ける。
どちらが描いた絵が分からないが、俺の頭にツノが生えているのは何故なのだろうか。
「無理にとは言わないが、仲良くしてやってくれ」
「悪い人でないのは分かるけど……喧嘩腰だから好きじゃない」
「……まぁ、それは否定しないが」
あいつももっと素直な性格だったら良かったのに。
なんで自ら喧嘩を仕掛けるのか…。
「もう寝るのか?」
「はい、疲れたので」
「そうか、おやすみ」
ブランケットをかけて、部屋の明かりを落とす。
寝るまで一緒にいてあげたいが、大量の仕事が残っているため15分ほどで部屋を出た。
部屋に戻って書類の確認を終えると、無性に甘い飲み物が飲みたくなって。
下まで降りるのは面倒だけれど、自販機で何か買うことにした。
「あ、先生!」
一瞬、体が拒絶反応。
この声は毎回厄介事を持ってくる。
「…どうした?」
「先生のこと探してたの!」
……嫌な予感。
「あ、あのさ…… 明日、も夜ご飯、一緒に食べない?」
……案外普通の頼み事。
てっきり無理難題を突きつけられるとばかり思っていた。
「…」
「ち、違うからな!蕎麦…蕎麦を多めに買っちゃったから、ほんのついでで…!!」
素直とは、こいつから最も離れた言葉なのかもしれない。
「…仕事が終わったらな」
「ほんと!?終わったら連絡してくれる!?」
「はいはい、分かったから」
「約束だからな!」
(……徹夜するか)
急ぎの書類だけ作成して…。
送られてくる資料に目を通すのは合間時間を使って…。
……いけるな。
「あ、千夏」
既に片足を校内に踏み入れていたその背中に声をかける。
「蕎麦は2人前で頼む」
「パンダの?」
「そう。食べられないけど、一応な」
「わかった!」
馴れ合いは無用のこの世界で────
”…”
ソレを求めるのは愚かなのだろうか。