第66章 親愛なる生徒へ
「あ、待って!その味、もう一個食べたい」
「俺だって食べたい」
「…」
「お前はひとつ食べただろ?」
「…じゃ、あ、いいよ。譲ってあげる」
…相手が千春だったら絶対に譲ってくれたのに、なんて。
”よくできました”
昔から千春達に甘やかされてきた私は、自分が何よりも優先されるべきだと思っていたから、なんでも自分の思い通りにしたかった。
でも、それが通用しない年齢になってからは、妥協をしている。
人に優しく出来たら、その度にお母さんはこうやって褒めてくれた。
それがちょっと嬉しかった記憶がある。
「ありがとう」
「…別に。美味しい?」
”ダメ。これは私の分”
”ひとつくらい分けてあげなさい”
”…でも”
”どんな味がして、どんな風に美味しかったか。共有できたらとっても楽しいのよ?”
「美味しい。じゃがいもがホクホクで…」
「ホクホクだったよな!今度、みんなとも食べてみよ〜っと」
「いいんじゃないか?」
…なんで今、思い出すんだろう。
「…アイツらとは。よく何食べてるんだ?」
「前はラーメンとか…。最近は…普通にコンビニ行ってみたり…とか」
五条が構ってくれなくなって、なかなかきつい時期があったけれど、今はそれが普通となってきた。
それもそれで寂しいけれど、無駄に傷つく必要が無くなったから、気持ち的には楽だ。
「何?先生も行きたいの?」
「いやいや。邪魔するわけないだろ」
先生は小さく笑って、最後の一口を口に入れていた。
「最近はあまり怒ることもないからな」
「あー、確かに」
以前はもっと……一日に3回くらいは先生の怒鳴り声を聞いていた気がする。
「人形効果は絶大か?」
「…それって、全部私が悪かったってこと?」
「主犯格だろ」
「ないない。私いい子だし」
「呼び出した回数、1番多いぞ」
「それは手続きとか、1番ややこかったし…!」
なんで五条や傑よりも問題児扱いされないといけないんだ…!
あの二人の方が圧倒的に悪人ズラだろ!