第66章 親愛なる生徒へ
パチッと目を開けて、一瞬考える。
体を起こせば、自分が寝ていたことに気がついて。
時計を見ては、1時間程度の睡眠で済んだことに安堵した。
そして、目の前にある存在に首を傾げた。
「お休みのところ申し訳ないのですが、学長室まで連れて行ってくれませんか」
喋る人形。
礼儀正しすぎる言葉遣い。
「お、お、まえは…」
「パンダです」
随分前に1度会ったことがある。
「なんでここにいんだよ」
「迷子です」
「まいご……だっさぁ」
ガツン、と頭が落ちた。
叩かれたんだな、って理解した時には千春がパンダを殴り返していた。
「…え、誰?」
「私」
千春の行動は全部私が責任を負わなくてはならない。
もう慣れたものだ。
「人を叩くような奴に道教えたくないしなぁ〜どーしようかな〜」
初めて会った時は、ついイラついてしまったけど、今の私の心は草原のように広い。
叩かれたことは忘れてあげなくもないけど〜…
「じゃあ、大丈夫です」
「え?」
のそっとテーブルから降りたパンダは、小さな歩幅でよちよち離れていく。
「ちょ、困ってるんじゃないの?」
「他の人を探します」
待って待って。
想像してたのと違う。
「…わ、分かったよ!連れてってやる!」
そう言うと、パンダはしてやった顔で「お願いします」と言った。
ムカッと来たけれど、言ってしまったことは取り消せない。
「せんせー?」
パンダを前に抱えて学長室へ入る。
「…な」
「なんかー、パンダが迷子だっていうから…」
そもそもパンダって自由に動ける立場なの?
なんか隔離とかされそうだけど。
「助かった、ありがとう」
「これでお手伝い12回目だよ」
「まだカウントしてたのか…」
「約束は守れよ?」
先生が作った人形が可愛いからどうしても欲しくて。
先生のパシリをする代わりならいいよ、と言われたので絶賛先生に媚びを売ってるところ。