第65章 家系
『……ってな感じで話しちゃったけど、大丈夫だった?』
話を要約すると、千夏が私の彼氏について聞いてきたから、見た目や素性を分かる限り教えたとのこと。
最初は断ったけれど、あまりの圧に負けたらしい。
「別に構わないですけど……今、千夏と一緒ですか?」
千夏、というワードに五条が反応を示す。
『いや。これ、1時間くらい前の会話だから…。てか、めっちゃ泣いた後みたいな顔してたけど、何かあったの?』
「うん、めっちゃ目腫れてましたけど、詳しいことは私も知らないんすよ。んじゃ、あざーす。また遊びましょーね」
携帯をポケットにしまうと、一気に頭が冴えてくる。
「歌姫?」
「そう」
「何て?」
「んー…」
私が教えないから、歌姫に行ったのか?
いや、そこまで知りたいなら、私に縋るはずだ。
…まさか
「…どした?」
いやいや、こんなことは……いや、でも千夏なら…。
「…今、歌姫から私の彼氏のことを千夏が聞いたって連絡が来て。もしかしたら、会いに行ったのかなって」
……何だこの仮説は。
まるで私が望んでいるみたいじゃないか。
────何を?
それは……口に出したら認めることになる、言いたくない。
「え。普通にやばいじゃん」
「…まぁ、良いところもあるから別に…」
「だからなんだよ。殴ったのは事実だろ」
そう言って、五条はどこかに電話をかけた。
私の足は自然と速さを失い、止まってしまう。
「…出ねぇ。傑にも聞いてみっか」
自然と手首に視線がいく。
昔ふるわれた痣は既に消えていたが、痛みが無くなった訳では無い。
痛みを感じて辛いと思う過程が、自分に残されていることに安心感を覚えた。