第1章 千夏様
ここで五条が助けに来たと思った奴に告ぐ。
小さい頃のあいつはそんな簡単に心を開く奴じゃない。
私の予想通り、五条も、両親も、誰も助けに来てくれなかった。
自分で言ってて悲しいけれど、事実だ。
術師殺しもこの事態に唖然。
早くも私を殺すことを決めた。
私は呪霊が見えるだけ。
呪術なんて使えない。
そもそも、呪霊だの、呪術だのといった言葉すら知らなかった。
ナイフを前に突き付けられ、絶体絶命の私は、何を血迷ったのか五条の真似をした。
何度か五条の術式を使おうとする仕草を見たことあったので、その光景を思い出した。
ふんっと力を入れれば私にも何かできるのではないかと。
本当に馬鹿だ。
当然、何もできない。
ナイフは近づいてくる。
『何笑ってんだ』
私はこの危機の中笑っていたらしい。
きゃはは、と。
なんてサイコな子供だろう。
そして、私は言った。
私じゃない私が言った。
「五条君は普通の男の子だよ。特別なのは私の方。死ね、カスめ」
すると、なぜか術師殺しは顔を引きつらせて、頭から血を噴出させた。
あたり一面まっかっか。
何が起きたのか分からなかった。
椅子に縛り付けられたまま、時がたった。
ずっと死体を眺めていた。
逃げられないのだから仕方ない。