第7章 疑惑
コードネームを得た翌日の任務も問題なく終えた私は、いつものようにジンへ完了報告をする。
すると、すぐにジンからの着信が入った。
私は、隣で録音データを確認し終えた零さんに目配せをする。
彼は軽く頷いて、周囲の様子を確認するためにその場を離れた。
『はい』
ジ:「明日からは、バーボンとは別行動だ」
『わかったわ』
ジンは労いの言葉もなく、要件だけを手短に話してくる。
私もそれがわかっているので、余計な言葉は発しない。
ジ:「驚かないのか」
私の反応が予想外だったのか、珍しくジンが私の返事に反応する。
『いつまでも、貴方がバーボンと一緒に任務させると思っていなかったから』
ジ:「フッ、そうか…まぁ、いい」
ジンはそれ以上、興味ないと言わんばかりに、鼻で笑った。
私はそんなジンの反応を無視して、質問する。
『それで、新しいパートナーは?』
ジ:「当分は、単独だ。まぁ、コルンやキャンティをつける時もあるがな」
『そう』
私は、ジンに気づかれないように安堵のため息をつく。
特定のパートナーと組む必要がないならば、今までどおり零さんとはセーフハウスで過ごせそうだ。
ジ:「それとRUMが直接、指示をすると言っていたから覚えておけ」
ジンは私の返事を待つことなく、電話を切った。
『RUMか…』
私はため息と共に、組織のNo.2の名前を呟く。
ついに、RUMと直接やりとりができる地位にまで、私は就いたようだ。
組織壊滅に確実に近づいていることへの高揚感と同時に、私の中に去来する気持ち。
私は、その気持ちに蓋をしようと両手で顔を覆った。
降:「ミア。お疲れ様」
ふいに耳元で優しく言われ、同時に後ろから抱きしめられた私は一瞬だけ体を震わせる。
しかし、すぐにその相手が誰かがわかった私は、緊張の糸を緩めた。