第6章 コードネーム
ベッドで眠りこけている男の上着のポケットから、私は男の携帯を取り出す。
連絡先を開いて、男が持っている政界の伝手がズラッと並んでいることを確認する。
『高官揃いね…』
男の部屋へ連れて行かれた私は、男をベッドに押し倒したと同時に隠し持っていた睡眠薬を口移しで飲ませた。
零さんが、というよりも公安が用意した薬は即効性が強い。私が普段使っている睡眠薬と同等か、それ以上。
『この国は敵に回したくないわね』と、薬を飲ませた時に私は思った。
携帯を左太ももにつけたレッグホルスターに入れ、代わりにUSBメモリーを出す。
男のパソコンから、情報を抜き取るためだ。
降:「首尾は上々だね」
私がUSBメモリーをパソコンに差し込んだ時に、零さんが入って来た。
『そっちは?』
降:「フォールド」
無駄を省いた返事だけを彼はして、一直線に部屋の窓へ向かう。
降:「そういえば」
零さんは、何かを思い出したかのように口を開く。同時に窓を開け放った。
降:「ここで狩ができるのは、神さまだけだったね。女神さま」
『えぇ。だから、狩れるのは私だけでしょ?』
零さんは、その答えに満足したようで口角だけを上げて笑う。
私は必要な情報がダウンロードされたことを確認して、部屋を後にした。
静かな海面に何かが落ちる音を後ろで聞きながら…