第6章 コードネーム
私が目を覚ますと、先ほどまでとは打って変わって室内は暗闇に沈んでいた。
私はゆっくりと起き上がり、体の状態を確認する。腰に少しだけ鈍痛を感じたが、大したことは無さそうだ。
そして、私はそっとお腹を撫でてみる。そこは私が寝ている間に、零さんが綺麗に拭き取っていた。
『本当は優しいのに…』
私は小さく呟いてから、この部屋に盗聴器が仕掛けられていたことを思い出し、慌てて口をつぐむ。
降:「誰のこと?」
『え?』
居ないと思っていた彼が、後ろから私の腰に腕を回して抱きしめてくる。
降:「誰が優しいの?」
もう一度、耳元で同じことを囁かれる。その甘い声に私は、収まった熱が再び燃え上がるのを感じた。
『バーボン…』
降:「誰かと比較している?」
少し意地悪そうな声で、零さんが問いかける。
『そんなことないわ…貴方だけよ』
私は、そう言って腰に回された零さんの左手を取り、そこに口付けた。
降:「まだ、足りない?」
『違うっ…!』
私は再び熱を持った体を零さんに気づかれまいとして、ベッドから出ようともがく。
しかし、片手でも強く私を抱きしめる零さんから逃げることは叶わなかった。
降:「そんなに慌てないで…ちゃんと後でするから」
『後で?!』
私は、零さんの言葉に驚きの声を上げて、再び自分で口を塞いだ。
降:「ははっ!慌てなくても大丈夫」
零さんは、そう言ってベッドサイドに置いてあった黒い物体を私が見えるようにかざした。
降:「もう、壊した」
『もしかして…貴方!?』
起きてからずっと、零さんに揶揄われたことを私は知り、恥ずかしくなって俯く。
降:「必死に隠す君も好きだよ」
零さんが追い討ちをかけて揶揄って来たので、私は拗ねて無言を貫き通すことに決めた。