第5章 潜入 ★
降谷Side
僕は気を失ったミアの体を丁寧に拭き、彼女の額にキスをしてからベッドを降りる。
そして、盗聴器の先で聞いている人物に向かって言葉を発する。
降:「ご満足いただけましたか?」
もちろん、盗聴器の先にいる人物が返事することは無い。
僕は、部屋中にあった全ての盗聴器を集めて、それらをつぶした。
その後、「僕の恋愛には興味なかったんじゃないのか?」と悪態をつきながら、それらをベッドサイドに置いた。
ふと、彼女愛用の赤色のレッグホルスターが僕の目に入る。僕はこれを外した時の事を思い出す。
あの時、僕は彼女にだけわかるように問うていた。
降:「(赤井のこと)忘れてない?」
彼女は、すぐに意図を理解したようで、このホルスターを見せて来た。鮮やかに輝く赤色を見ながら、彼女の勘の良さを嬉しく思うと同時に、僕は嫉妬していた。
僕が彼女に送った左足のアンクレットの反対側に、彼女はあの男を象徴する物を身につけていたからだ。
僕は嫉妬心に駆られたまま、そのベルトに手をかけていた。すると、彼女は僕に予想外の答えを返して来た。
『当分、要らないわ。貴方が居るから』
その言葉は、彼女の本心ではないかもしれないと思ったが、僕は彼女が覚悟を決めたことに満足した。
もう一度、静かに眠るミアの額に僕はキスをする。
降:「絶対に僕が守るから」
そう告げて、僕は開けたままにしていたベッドルームのカーテンを閉めるため、窓辺に向かった。
700ヤード先で僕たちの一部始終をスコープ越しに見ていた男の存在には気づかずに…
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