第3章 偽装 ★
降谷Side
ベルツリータワーが見えるホテルの一室。僕はソファで彼女と肩を並べながら、お酒を飲んでいる。
料亭で「ハニートラップを教えて」と言った彼女にキスをした後、僕は「じゃあ早速、始めましょうか」と言って、彼女をホテルに誘った。彼女は、最初こそ驚いた表情を見せていたが、すぐに嬉しい顔に変わって、僕についてきたのだ。
ホテルに入ってすぐ、僕はこのまま彼女を抱いてしまいたい思いを胸に秘めながら、彼女にお酒を勧めた。まずは彼女の真意を確かめることが、先だ。
『嘘つき』
他愛のない会話のつもりで返した言葉が、どうも彼女には引っかかったようだ。
「お互い様だろ」と心の中で思ったが、すぐに「これは彼女の真意を知るチャンスだ」と思い直し、僕は話をすり替えた。
降:「お互い様では?」
『お互い様?』
降:「えぇ。貴女ほどの人が、なぜ僕にハニートラップを教えて欲しいなんて、言うんですか?」
『なんだ、そんなこと?落としたい男がいるからよ』
想定していなかった彼女の返答に、僕は明らかに動揺した。彼女もそのことに気付いたようだ。
「どう取り繕うか」と瞬時に考えた僕だったが、その後の彼女の問いで、それは杞憂に終わった。