第3章 偽装 ★
『私、変なこと言っているかしら?』
降:「本当に貴女は面白いですね」
『面白い?』
降:「えぇ。貴女が落としたい人が、女性ならまだしも。ターゲットが男なのに、その落とし方を男の僕に聞くんですか?僕、男の人にもハニートラップを仕掛けているように見えますか?それはちょっと、傷つくなぁ」
彼は大袈裟なため息をついているが、実際のところはきっと傷ついていないだろう。
ただ、誤解を招く発言をしたのは事実なので、私は謝罪と共に真意を話し始めた。
『ごめんなさい。貴方が男性にも、仕掛けているなんて思っていないわ。ただ、私が落としたいと思っている人は、今までとは全く違うタイプなの』
降:「全く違う?」
『赤井捜査官なの』
私は意を決して、今日の会議から今に至ったことを彼に話し始めた。
『私が潜入するって決まった時、全員の視線が私に向いていたことを覚えている?』
降:「ええ」
『その後すぐに、赤井捜査官が貴方に「続けて」と言ったじゃない?あの一言で、私は救われたと思って、嬉しくなったの。不快な視線を一瞬にして払ってくれたから』
降:「そうでしたね」
『私は会議後すぐにお礼を言おうと思って、赤井捜査官を追いかけた。でも、いざ彼を目の前にしたら、自分でもビックリするくらいその声は震えちゃってて。そしたらね…』
私は、その時の胸に宿った想いを思い出しながら続ける。