第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●伊月 俊● 〜校庭〜
「あ…」
俺の視界には、見慣れた白い校舎しか映らなかった。
少し特殊な目を持っているからと言って、女の子の姿は見れない。
たとえ、そこにいると分かっていてもだ。
女の子は、俺の力の及ばないところに行ってしまった。
「伊月〜どうした?
なんか変だぞ?」
諦めたくはなかった。
後悔するということも分かってた。
いまあの女の子を諦めてしまったら、俺の中に積もりすぎた好奇心が行き場を無くしてしまう。
解消しきれなかった問いは、しばらく俺を苦しめるだろう。
けど、俺の役目は同じ学校の後輩の所在を把握することではない。
あくまでも今は、部活動勧誘だ。
あの女の子を追いかけることは、職務放棄を意味している。
女の子を見失った俺は、選択肢は2つしか用意してもらえなかった。
モヤモヤを募らせたとしても、部活動勧誘を続けるか。
未成年濫用して、ストーカー規制法を誤魔化すか。
ここで、冒険を選んではいけないことは分かっている。
馬鹿にはなれない。
垣間見えた違う自分を、あたかも自身であるかのように装うことも。
何もかも投げ打って飛び込むことも。
俺は出来ないんだ。
小金井ならば、きっと迷うことすらないんだろうな。
それに引き換え。
いつも模範解答を選んでしまう俺は、面白みもなく。
「…見間違いだな。」
モヤモヤを募らせる方を選んだ。