第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●伊月 俊● 〜校庭〜
そもそも、あり得ないことを「絶対に起こらない」と証明できないのならば。
それもまた、正解とは言えない。
“あり得ないこと”ではない。
“起こり得る1つの可能性”だ。
それが、あの女の子だったら?
なにもあり得なくなんかない。
だから、話してみよう。
自分の直感を信じて。
女の子の目に走った、紫の閃光を信じて。
いま考えれば、あの時に感じたのは“懇願”だったのではないだろうか?
あの子は、見つけて欲しがってる。
もう2度と見ることは叶わないと思っていたけれど。
見つめたその暗がりの奥から、再び俺の元に現れてくれることを願うのは。
あの子の目に走った光を、愚直に追求するのは、いけないことだろうか?
だけど、きっとそれが答えになる。
本当の正解が、そこにある。
本当のあの子を見つけた時、初めに2つの事象が重ならなかった原因が分かるはずだ。
俺の見えてなかった、何か重要な要素が。
「さっきのあの子さ、」
そう言って、校舎の方に再び視線を向けた。
水戸部と小金井、2人の視線も促すように。
「もしかしたら」
そこまで言いかけた時に、俺は気づいてしまった。
チームメイトに話しかけられて、外してしまった視線のその先に。
女の子の後ろ姿は、もうなかった。