第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●伊月 俊● 〜校庭〜
あの子。
もしかしてだけど…
いや、そんなことあるわけない。
俺の中で、視界に収めた“女の子”の後ろ姿から事象が発生し。
同時に、既に俺の中に存在していた、“可能性”と言う名前の、もう一つの事象が展開する。
2つの事象には、共通点がある。
あるはずだと、俺の直感は言う。
ただ、それに見合う答えが見つからない。
いくら条件を入れ替えても。
なんど要素を割り出しても。
2つの事象は、どうしたって重ならない。
重なるなんて、あり得ない。
何度も考えて、何度も同じ回答を導き出した。
そこまでやったら、諦めてもいいはずだ。
なのに、疑う余地が100%無い回答を、正解にはできなかった。
俺の直感が、それだけは絶対に許さなかったから。
しばらくの間、俺の中で理屈と直感が静かに鬩ぎ合う。
どのくらい費やしていたのかは分からない。
思考量だけで考えると、結構長い時間がかかったように感じた。
体内時計の狂いを感じはじめた頃。
決着をつけられず黙り込むオレの肩を、何かがトントンと叩いた。
「ん?」
釣られるように振り返った先にいたのは…
あぁ、水戸部か。
「いや、大丈夫だよ。
ただ少し、気になることがあってな…」
「?」
「いづぎ?
…どうがじたのか?」
俺を見下ろす水戸部と、その体に巻きつけた腕を緩ませて鼻声で話しかけてくる小金井。
咄嗟に「気になることがある」とは言ったものの、2人にこのことを話していいものだろうか?
不確か極まりない俺の直感を話して、何か意味があるだろうか?
「伊月?」
でも、仮に。本当に仮に。
もしかして。
もしかしたら。
あり得ないことが、現実に起こってるとしたら?