第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●伊月 俊● 〜校庭〜
「なんか普通に断られるより切ないかも…」
女の子の背中を見送る小金井の溜息を聞きながら、俺はさっき頭に浮かんだことを考えていた。
一方、俺とは全く違う眼差しで見つめているであろう小金井は、溜息に相応しい落ち込んだ顔をしていた。
「オレが一方的に話しちゃってただけなのに。
困ってるはずなのにしっかり答えてくれて…
それに引き換え、オレってスゲェー子ども…」
鼻を啜る音が聞こえてきたと思ったら、次には「水戸部ぇ〜」という小金井の声。
服の擦れる音を掻き消すように、「ゔっ…!」という水戸部の呻きが聞こえた。
内側で発生したむしゃくしゃに任せて、相当なパワーで突っ込んで行った小金井は、“慰め”を所望して抱き着いたつもりだろうけど。
水戸部の顔が苦痛に歪んでいるのを見ると、ただの突進だったみたいだ。
よかった、吐け口の先が俺じゃなくて。
違う。そんなことを考えたいんじゃない。
普段から悩まされているのは確かなんだけど、すぐ後ろで幕開きした茶番は、文字通り日常茶飯事だ。
俺の頭を現在進行形で悩ませるのは、こっちじゃない。
あの女の子の方だ。